猪熊隆之さんの「山の天気ライブ授業」in金華山
日本山岳会では、創立120周年記念事業として、各支部で猪熊隆之氏を講師に迎え「山の天気ライブ授業」を開催している。
1月17日(土)、18日(日)東海支部の授業があったのでレポートします。
「山の天気ライブ授業」の講師は、山の天気ならこの人というほど有名な、「高尾山からエベレストまで、国内外の山岳気象情報を提供する、国内唯一の山岳気象専門社 株式会社ヤマテン」の代表取締役猪熊隆之さん。
カリキュラムは、初日が机上講習、2日目がそれを踏まえた実際の観天望気などのライブ授業となっている。
17日は支部の新年会の行事に組み込む形で、次の猪熊講師の講義を拝聴。

<登山における気象リスクとは>
・登山においては、計画段階においてリスクを想定し、登山中の想定外のリスクを減らすのがポイント。
・そのうち、気象リスクについて、山にどのような気象リスクがあるかを知り・さまざまな想定シチュエーションに備え・実際リスクに遭遇した時正しく行動するのが肝要。
・気象リスクは「天気予報」を見るだけではダメ。
天気予報の多くは雨、晴れなどマークで示される。
しかし、同じ雨でも小雨なのか大雨になるのか、晴れでも風が強いのか弱いのかなどによって、気象リスクが大きく異なる。
また、稜線、雪渓など登山ルートにより、気象リスクは異なる。その日の気象リスクが低めのルートを選択することも必要。
・気象遭難Top4は、低体温症、落雷、沢の増水、突風による転滑落
・気象遭難を防ぐには ①登山前日に天気図を確認する ➁登山中に雲や風を確認(観天望気)
<山の天気を知る>
・天気が崩れるのは雲ができるから→雲が発生するかどうかは、上昇気流、水蒸気の量に左右される
・上昇気流が発生する場所:山の斜面・低気圧や台風の中心・前線・風と風がぶつかりあうところ・地面が暖められたところ
→風と風のぶつかり合うのは山と山の間や、稜線鞍部など:高賀山で御坂峠だけが特に風が強かったのも納得
・山に雲がかかることが多いのは、風が山にぶつかり上昇気流が発生するから
・上昇気流が発生しても雲が発生しないことがあるのは、水蒸気が含まれていない場合
・水蒸気の含まれる海側から吹く風の風上側の山で天気が崩れる
・登ろうとする山が海側から吹く風の風上側かどうかを確認する方法
→①海との位置関係(地図)と②等圧線の間隔と向き(天気図)を確認する
・地図と風向を確認し、風が海側から吹く時は天気が崩れ、内陸から吹く時は天気が良くなる
・天気図では、①等圧線の向き(風向)②等圧線の間隔(風速)を確認する
・平均風速15m/Sで気象リスクは高くなる。等圧線の間隔(4hPa)が東京/名古屋の距離より狭いのが目安
・風速が強い時に出る雲の種類を知っておく:レンズ雲・笠雲・吊るし雲・山旗雲
・天気図での風向の確認のしかた:等圧線の向きを確認し、高気圧では時計回り、低気圧では反時計回りで等圧線に沿って風が吹く
<低体温症に備える>
・低体温症は、深部体温が35℃以下に低下した状態をいい、 強風(特に平均風速15m/s以上)・濡れ(雨や雪、汗)・ 低温(10℃以下、特に急激に低下する状況)の3条件がそろったときに発生する
・低体温症を防ぐには、①登山する山の特性を知る
→発生しやすいのは、山小屋や避難小屋の間隔が長い・森林限界を越えた尾根や稜線を長く歩くルート・エスケープルートが少ないルート・風を避ける岩場の少ないなだらかなルート・日本海側気候に属する山岳
・➁引き返しポイントを設定する
→森林限界・尾根(支尾根)に出る所・主稜線(主尾根)に出る所・エスケープルートとの分岐・山小屋や避難小屋、幕営地
<局所気象災害に備える>
・雷雨など局所気象災害は、次の条件により積乱雲によって発生する:①上空に寒気、➁下層に暖かく湿った空気
・①上層の寒気は500hPa面の気温で確認、➁下層の空気は500hPaと850hPa面の気温差で確認→差が30℃以上だと極めてリスク高
・登山中は観天望気して、雲が「やる気」があるかどうかを確認する
・雷が来たときは、高い木・登山者同士など4mの間隔を守る。高い木・鉄塔・軒先などから離れる
盛りだくさんだったけど、おおよそこのようなお話を伺った(こうやってブログをまとめつつ、おさらい)。

翌18日は、9時30分に金華山山麓の岩戸公園に集合。参加者は35名。
資料「これだけは覚えておきたい!危険な雲」、当日の「850hpa面の気温+風予想図」「500hpa面の気温+風予想図」に基づいて、登山しながら猪熊講師の解説を聞きつつ確認するライブ授業を開始。

にぎやかに東坂ハイキングコースを登りながら、要所要所で観天望気のしかた、引き返しポイントの設定のしかたなどをうかがう。

金華山山上に出ると、ロープウェイで上がってきた観光客とも合流。
邪魔にならないように注意しながら、見晴らしのいい天守閣直下で、説明を受ける。
あいにく、天気が良すぎて、雲が見当たらなかった。。。

天守閣の最上階に2回に分けて、水蒸気の含まれる海側から吹く風はどちらから吹く場合か、上昇気流が発生しやすい風と風がぶつかりやすい場所がどんなところかなどをうかがう。

天守閣下で三々五々、懇親しつつ朝食。昼からは展望レストラン屋上でおさらい。

さまざまな雲の記された、ヤマテン特製の手ぬぐいをつかって、それぞれの雲の発生する標高、メカニズム、天気への影響などの解説をうかがう。

最後に、みんなで岐阜城をバックに記念撮影。
14時に無事岩戸公園に下山。皆さんお疲れさまでした。猪熊講師、貴重なライブ授業ありがとうございました。

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